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舌下免疫療法


アレルギー性鼻炎でお悩みの方へ、舌下免疫療法について解説します。 これまでのお薬は「症状を一時的に抑える」ものでしたが、この治療法はアレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ体内に取り込むことで、アレルギーそのものを根本から治すことを目的としています。

治療を始める前に必要な検査

舌下免疫療法を開始するためには、「本当にスギやダニによるアレルギーなのか」を確認する事前検査が必須となります。

  • 問診・診察:ほかに隠れた病気がないかを確認します。
  • 血液検査: 少量の採血を行い、スギやダニに対するアレルギー反応の強さ(IgE抗体の値)を測定します。

使用する薬剤

現在、日本で保険適用で処方できるのは以下の2つのアレルギーに対するお薬です。5歳以上のお子様から治療が可能です。

  • スギ花粉症: 「シダキュア」という舌下錠を使用します。
  • ダニアレルギー: 「ミティキュア」(または「アシレア」)という舌下錠を使用します。

治療の効果

  • 約20%の方: 症状が完全に出なくなる(完治)と報告されています [1]。
  • 約50〜60%の方: 症状がとても軽くなり、これまで飲んでいたアレルギーの薬を大きく減らすことができます [1]。
  • 全体の約7〜8割の方に、しっかりとした効果が認められています。また、お子様の場合は、将来の気管支喘息の予防にもつながることがわかっています [2]。

お薬の飲み方

ご自宅で毎日1回、ご自身でお薬を服用していただきます。

  1. 手を拭いて乾かす: お薬は湿気で溶けやすいため、乾いた手でシートから取り出します。
  2. 舌の下に置く: お薬を舌の下に置き、そのまま1分間じっと待ちます(自然に溶けますが飲み込まずに保持してください)。
  3. 飲み込む: 1分経ったら、そのまま飲み込みます。
  4. その後の注意: 飲み込んだ後の5分間は、うがいや飲食を控えてください。
  5. 継続しやすい時間帯を決めて内服して下さい。
  6. 新規にアレルギー反応を抑える薬を内服する必要はありませんが、普段から使用しているアレルギーのお薬があれば続けて使用して構いません。

治療期間の目安

体質を根本から変えるため、「3年〜5年」という長期間、毎日継続していただく必要があります。根気のいる治療ですが、3年以上しっかり続けることで、治療終了後も数年以上にわたって効果が長続きすることがわかっています [1, 2]。

 副作用について

体の中にアレルギーの原因物質を入れるため、特にお薬を使い始めてから1〜2週間以内に副作用が出ることがあります。

よく見られるお口周りの症状(頻度:約60〜70%)

治療を受けられる方の半数以上に見られますが、その多くは軽度で一過性です。毎日服用を続けるうちに、1〜2か月ほどで体に耐性ができて自然に治まることがほとんどです [1]。

  • 口の中・舌の下・のどのかゆみや違和感
  • 口唇の腫れ、舌の下の腫れ
  • 耳の奥のかゆみ

胃腸の症状(頻度:約1〜5%)

お薬を飲み込むことで、消化器に一時的なアレルギー反応が出ることがあります。

  • 腹痛、胸やけ、吐き気、胃の不快感

直ちに受診すべき危険なサイン:  まれ(数千人に1人程度)に強い全身のアレルギー反応(アナフィラキシー)が出ることがあります。特にお薬を使い始めて間もない時期(最初の1か月)や、服用後30分以内に起こりやすい傾向があります。以下の症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診または救急車を呼んで下さい [3]。

  • 息苦しい、ゼーゼー・ヒューヒューと呼吸の音がする
  • 飲み込みにくい、胸が詰まるような強い痛みがある(※この症状が続く場合は「好酸球性食道炎」という病気の可能性があるため、必ずお申し出ください [4, 5])
  • 全身に強いじんましんが出る
  • 急なめまい、立ちくらみ、意識がぼんやりする

治療を始める前の注意点(治療できない方・時期)

安全のため、以下に当てはまる方は治療をお断りするか、慎重に判断する必要があります。該当する場合は必ず医師にお伝えください。

  1. 重い気管支喘息がある方
  2. がんや免疫の病気で治療中の方
  3. 過去にこのお薬で強いアレルギー反応を起こしたことがある方
  4. 特定の血圧のお薬や緑内障の目薬(βブロッカー)を使用している方
  5. 妊娠中の方(治療中に妊娠した場合は継続可能ですが、妊娠中に新しくスタートすることはできません)
  6. スギ花粉の飛散時期(1月〜5月頃): スギ花粉症の治療は、花粉が飛んでいる時期には新しく始めることができません(6月以降の開始となります)。ダニの治療は1年中いつでも開始できます。
  7. 抜歯をした直後や口内炎がひどい時は、お薬の成分が血液に直接入りすぎてしまう危険があるため、お口の中の傷が治るまで数日間お薬をお休みしていただきます。

※ご自宅でお薬を飲んでいて不安な症状が出た場合や、飲み忘れてしまった場合の対応など、ご不明な点があれば自己判断で中止したり量を増やしたりせず、必ずご相談ください。

スギとダニの同時治療について

スギとダニの2つの舌下免疫療法を併用することは臨床上行われており、可能ではあります。 ただし、海外で安全性が詳しく確認されているのは主に「花粉と花粉」の組み合わせであり、「花粉とダニ」を同時に治療した場合のデータはまだ限られているという点をご理解ください [6]。 当院で併用を行う場合は安全を最優先とし、以下の手順で進めます。

  1. 段階的に開始: まず片方のお薬を2週間ほど服用して体に慣らしてから、もう片方を追加します [6]。
  2. 服用の間隔: 2種類を同じ日に飲む場合は、お薬同士の影響を減らすため「1つ目を飲んでから5分間以上空けて2つ目を飲む」か、「朝と夜に分けて飲む」ようにします [6]。

受診1回あたりの費用

保険適応の治療になります。医療機関での再診料・処方箋料と調剤料などを合わせた受診1回あたりの総自己負担額(3割負担)は約 2,500 〜 3,500 円/月です。 ※自治体の小児医療費助成制度が適用されるお子様の場合は、助成内容に応じて治療を受けられます。

参考文献

  1. Dhami S, et al. Allergen immunotherapy for allergic rhinoconjunctivitis: A systematic review and meta-analysis. Allergy. 2017;72(11):1597-1631.

  2. Alvaro-Lozano M, et al. EAACI Guidelines on Allergen Immunotherapy: Prevention of allergy of new onset and exacerbations. Pediatr Allergy Immunol. 2020;31(7):718-732.

  3. Epstein TG, et al. AAAAI/ACAAI Surveillance Study of Sublingual Immunotherapy Systemic Reactions: The 6-Year Sublingual Immunotherapy Surveillance Study Report. J Allergy Clin Immunol Pract. 2014;2(2):161-167.

  4. Lucendo AJ, et al. Guidelines on eosinophilic esophagitis: evidence-based statements and recommendations for diagnosis and management in children and adults. United European Gastroenterol J. 2017;5(3):335-358.

  5. Cafone J, et al. Eosinophilic esophagitis during sublingual and oral allergen immunotherapy. Curr Opin Allergy Clin Immunol. 2019;19(4):350-357.

  6. Nelson HS, et al. Sequential Treatment Initiation with Timothy Grass and Ragweed Sublingual Immunotherapy Tablets Followed by Simultaneous Treatment Is Well Tolerated. J Allergy Clin Immunol Pract. 2016;4(2):276-283.e1.